島根県に要望書提出沖手遺跡の全容解明を求める会(中世益田の遺跡活用を考える市民の会(けやきの会)では、平成25年5月15日につづき、平成25年6月18日に島根県知事及び同教育長に対し以下の 沖手遺跡の全容解明を求める要望書を追加分の署名1327名分(合計5435名)を添えて、島根県教育庁参事の祖田氏に提出致しました。

以下にその要望書を掲載致します。ご覧ください。

 

 

 

島根県に要望書提出

島根県知事        溝口善兵衛 様

島根県教育長     今井康雄 様 

中世港湾遺跡・沖手遺跡の全容解明を求める要望書

沖手遺跡の全容解明を求める会

 (中世益田の遺跡活用を考える市民の会(けやきの会)

代表・石田貢三 

連絡先:益田市幸町734 携帯:09033798355

要望

日本列島歴史上極めて重要な中世港湾遺跡群・沖手遺跡の全容解明に向けての調査を強く求めます。

理由

益田市は、第一級の中世資料、益田家文書刊行にあわせ、中世益田氏の居館・三宅御土居や七尾城の整備、さらに、高津川・益田川河口に展開した中世港湾遺跡群の一つ、中須東原遺跡の国史跡指定を目指しています。三宅御土居を中心とした益田地区が中世の政治活動の場である一方、河口は経済活動の場でした。このように中世600年間にわたり、都市の全体像をとらえることができる全国でも数少ない地域として注目されています。益田市が「歴史を活かしたまちづくり」に取り組む所以です。以下は具体的な理由です。

沖手遺跡は益田川右岸の水田(久城町)に広がる遺跡で、平安時代の11世紀末から13世紀にかけて発展した中世湊(みなと)町跡。道路によって整然と区画された大規模な町割りが確認され、交易、流通の拠点として日本海沿岸部にいち早く出現した湊町として注目され、室町時代を中心に繁栄した中須西原・東原遺跡とともに、中世湊町の具体像を周辺景観とともにそっくり残した稀有な例として高い評価を得ています。特に注目されているのは、(れき)敷きの船着き・荷揚げ場、その背後の町並み、さらに倉庫群や鍛冶屋、鋳物屋などの建物が整然と配置され、福王寺をはじめとする五福寺等の宗教施設が控えるという見事な歴史的町並みを形成していました。これらは博多に次ぐ超一級の湊町跡として評価されています。

②益田川左岸の中須東原遺跡については、国史跡指定に向けて専門家による同遺跡整備検討委員会が1年間かけて遺跡の整備基本計画などをまとめますが、同委員会は港湾遺跡群の変遷の解明や、周囲の景観保全も含めた一体的な保存を図ることの必要性を指摘しています。

③ところが、益田川河口一帯には商業地化の波が押し寄せています。昨年秋、注目されている沖手遺跡の一角にホームセンターが出店を計画。これに対し、市教委は灯油タンク設置部のみ発掘調査し、建物部分については県教委の判断に従い、調査抜きの基礎杭打ち工事で対応することを表明しています。もし、こうした対応に終始するならば、沖手遺跡は中心部分を含め、全体像の把握が不可能になります。

 ④「専福寺」跡全域が建設地内に包含されています。中世の益田川河口には、中須東原遺跡そばの福王寺を含め「福」の付く名の寺が五か所あり、「五福寺」といわれ、専福寺はその一つ。中世の寺は、交易などの流通拠点として現在の商社的な役割を担っていたとして注目されており、調査されずに工事が行われれば、重要な寺の実態解明ができなくなります」

 ⑤「五福寺」は旧益田地区に現存する医光寺(染羽町)、万福寺(東町)の前身といわれ、益田市の歴史像全体を解明する上で「専福寺」の跡地は沖手遺跡のなかでも重視しなければなりません。

 ⑥江戸時代、「専福寺」跡は益田七浦(大浜、木部、大谷、津田,遠田、久城、中須)の浦事務を掌握する浜田藩益田組専福寺浦番所が置かれた場所といわれています。その場所の特定と遺構の究明は近代益田の歴史の解明にも通じます。

 ⑦益田道路と市道建設に伴う発掘調査結果から、建設地内には中世の町屋跡が埋蔵されている可能性が高いとみられています。町屋と寺がセットで確認されれば、中須東原遺跡と合わせて中世の湊町の実態解明に迫ることができます

 ⑧国指定に向けての取り組みが始まった対岸の中須東原遺跡とともに沖手遺跡の全容解明は益田川下流域の港湾遺跡群の変遷を解明するために不可欠です。市教委も発掘報告書「沖手遺跡」(20103月)の中で「引き続き沖手遺跡の全容解明と中世益田地域における都市構造の中で重要な位置を占める益田川下流域の港湾遺跡群の変遷に関する調査研究を継続する必要がある」としています。

日本列島歴史上極めて重要な中世港湾遺跡群である沖手遺跡、中須東原遺跡、今市中世船着場の一体的な保存、活用は、県西部の特色を生かすためにも欠かせません。文化財行政と都市計画事業を整合性あるものにし、「歴史を活かしたまちづくり」を進めていくことを追加分の署名1327名分(合計5435名)を添えて、強く要望します。

なお、同様の要望書を益田市長、同教育長に66日に追加分の署名3154名分(合計5336名)の署名を添えて提出いたしました。同日に益田市議会議長にも陳情書を提出致しました。

益田市遺跡略図

沖手遺跡発掘品